えっ!とお思いかもしれませんが、
「冬牡丹」と「寒牡丹」は違うのです。
まず、春咲き品種の牡丹を、
温室を利用して人工的に春の状態にして咲かせます。
そしてシーズンが近づくと温室から取り出し、
鉢ごと埋め込んだのが「冬牡丹」と呼ばれるものです。
春のつもりで蕾(つぼみ)が膨らんだのですから
青い長い茎と、大きな緑の葉が特徴です。
(牡丹は落葉樹なのにちょっと考えても変です。)
そうは言ってもこの花の長所は見たいときに必ず有る・・・
お客様のニーズにある程度合わせることが出来、
うまくすれば全株満開にするのも可能でしょう。
何であれ牡丹の促成栽培が可能になったのは
生産者たちの努力の賜(たまもの)でしょう。
一方「寒牡丹」は人手を介さず、
自然の状態で時期が来れば自ずと花を咲かせます。
ただデリケートな品種ですから、
気候の状態によって敏感に反応し、
場合によっては開花せずに終わってしまうものもあります。
これも自然にゆだねるからこその事象でしょう。
ひとたび咲けばその姿はいかにも冬の花らしく、
その風情は晩秋及び、年の瀬の雰囲気でもあるし、
はたまた気温が下がれば花の形も変わり新春の雰囲気でもあります。
どうしてそのような風情が出てくるのでしょうか。
牡丹は落葉樹です。
ですから寒牡丹は茎が細く、短く、葉がほとんど出ません。
(もし出ていても赤っぽい軟らかいものです)
これも彼らの寒さ対策なのでしょうが、
春先のタラの芽を思わせるような姿です。
おそらくこのへんから周りの深い眠りの中で、
一人、凛(りん)と咲く冬の花の風情が
醸し出されてくるのではないかと思われます。
自ずと姿が違います。世間では「寒牡丹」も「冬牡丹」も
同じようにおもわれがちですが、 実際は違います。
寒牡丹は、自然の中に咲き、子孫を残すために必死に生きています。
冬は風がきつく、昆虫がいないので風に運んでもらいます。
風で茎が折れないように寒牡丹は花首が柔軟に出来ています。
だから、茎の色やカタチにも味わいが出るのです。
自らの意思でムダな葉っぱはそぎ落とすなど、
省力化しながら息を潜め、ここぞというときにいっきに花を咲かせる寒牡丹。
これが二季咲きの牡丹の生きる知恵なのでしょうね。
我々が言う本物はまさにこの「寒牡丹」のことです。
取り扱いが多い「冬牡丹」とは割く時期や見た目などが異なり
そもそも育て方や発祥、そして寿命が異なります。
日本では、島根県八束町(大根島)が主産地として有名で、
冬牡丹は12月~1月にかけてお寺など観光地に鉢で出荷されています。
牡丹の促成栽培では4℃でおおむね50日間、
前処理として15度 10日間の予備冷蔵を施せば開花期は早くなるが
加温管理することで12月下旬から開花させることが出来ます。
中国で薬用として生まれた牡丹は、唐の時代に観賞用として大流行し、花の王様として愛されてきました。それが平安朝のころ、わが国に渡来し、寺院などに植えらました。一般化したのは、江戸時代になってから。色彩鮮やかで大きな花瓶の牡丹は、その後、品種改良されいろんな名前とともに種類を増やし続けました。そして文化人なども魅了し、屏風や挿絵、詩や歌に用いられながら時代を超えて様々な人々を魅了してきました。