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住職の想い【第2回】お寺から飛び出したいと思うように

夜遅くまで牡丹の世話をする先代の姿を見て、住職はお寺から飛び出したいと思うように、就職を機に次第にお寺から足が遠のいていきますが…。

夜遅くまで牡丹の世話をする先代の姿を見てお寺から飛び出したいと思うように

私も中学生になり、世間並みに高校受験、大学受験の勉強をするようになります。その頃になると、そろそろ自分の意志が出てまいりましてね。でも、どうもこのお寺というものがあるので、自分の進路を自由自在に考えることができないんです。どうしてもお寺をして、そのうえで何かするという展開しか描けなかった。非常に窮屈さを感じておりましたね。牡丹については、先代がやっぱり昔と一緒で、相変わらず自分でコツコツやっていました。でも一人でやっているものですから、時間が足りない。だから夜になっても、懐中電灯を点けて牡丹の育成をするようになっていたんです。

その姿を見て、今までは何も思っていなかったんですけど、自分の進路をいろいろと考える時期になった時。その時に先代が夜遅くまで、一所懸命に牡丹の世話をしている姿を見て「こんなお寺すんのちょっと嫌だな」と。そういう気持ちが心のどこかで湧いてきたんじゃないかと思います。自然と心が拒絶反応をするようになったんです。花は好きだけども、夜遅くまでこんな仕事をするのは嫌。そうして無意識のうちに、何とかして、何かを口実にお寺を飛び出したいと思うようになっていったんです。

就職を機に次第にお寺から足が遠のいていく

大学も卒業して人並みに就職ということになったんですけど、その時は先代もまだ若いし、世間に出て社会勉強するのもひとつの手だと。まあ、うまい理由をつけてお寺を飛び出して会社勤めをしたんです。そこは全国企業でしたから、転勤を重ねて関西からだんだん東へ東へ行くようになりました。ちょっと東へ行った、お寺から少し離れた。これなら休みになっても帰らなくていいぞと。そして、もっと離れた。もう帰らなくていいぞと。

そんな訳で会社へ勤めて18年近く過ぎ去りました。その間は、先代はまだ元気で頑張ってくれているはず、頑張ってもらわないと困る。いや、頑張っているんだと。自分に言い聞かせながらね。会社のことだけ考えていました。お寺のことは、何度かちらちらと思うこともありました。面白いことに、お寺の本堂の阿弥陀さんのね、夢を見ることもありました。